差圧式給気口で「玄関ドアが開かない⁈」を解消する方法
高気密住宅のメリットと意外な問題点
高気密住宅の進化は、現代の住宅の大きな改善点の一つとして挙げられます。建築基準法の改正により、従来の各部屋単独の換気から家全体を計画的に24時間換気するシステムへと移行し、窓を開けることなく室内の空気をクリーンに保つことが可能になりました。
この高気密住宅には、換気のために外気を取り入れる『給気口』があります。「玄関のドアや窓の開閉が重い」「鍵がかかりにくい」といった問題は、この『給気口』とキッチンなどの『換気扇』が大きく関係しています。
ドアが重くなる理由の一つは、室内が「負圧状態」になるためです。負圧状態は、外気の給気量よりも換気扇による排気量が多くなることで室内の気圧が下がり、外の空気が室内に入ろうとドアを押し付けることで起こります。また、ドアの鍵がかかりにくくなるのは、外気の圧力が過剰にドアのパッキンを押しつぶし、かんぬきに当たる金属の四角い棒とそれを受ける穴がずれてしまうためです。
実際、ハウスメーカーやマンションデベロッパーは以下のような対策をユーザーに推奨しています。
- 日ごろから給気口を開ける
- 給気口を掃除する
- 換気扇やレンジフードを弱で回す
- 換気扇やレンジフードを使う時は窓を少し開ける
給気量不足をスムーズに解消する方法
原因の一つ「負圧」は、給気量不足を解消することで改善される可能性が高いです。しかし、単に給気量を増やすだけでは、室内の気密性を保つことができません。
レンジフードの運転は致命的な負圧を引き起こす
キッチンのレンジフードの排気量は、通常の常時換気システムの排気量と比較しても10倍から20倍と非常に高いです。特に高気密住宅では、レンジフードを運転すると急増する排気量に対して給気口から取り入れる空気量が不足し、室内が負圧状態になりやすくなります。これにより、「ドアや窓が重くて開かない」という現象が高確率で発生します。
さらに、「同時給排気レンジフードを設置したが、給気口と排気口を近づけすぎたためにショートサーキットを起こし、結局負圧が解消できない」という事例も耳にします。
平時とレンジフード運転時で排気量に大きな差がある場合、それがボトルネックとなります。このボトルネックの解決策として、変化する排気量に合わせて給気量をリニアに可変できる『差圧式給気口』を提案します。給気口の種類を見直すことで、ユーザーに快適な生活を提供しましょう。
差圧式給気口で快適な室内空気環境を実現!
差圧式給気口の種類と取付場所
ベストパーツオンラインでは、ユニックス製の『差圧式給気口』を2種類ラインナップしています。それぞれ取付場所が異なり、用途に応じて選べるようになっています。
壁面取付用(品番:PDF150BWF)は、主にマンションなどのベランダ側壁面に取付けられます。シンプルなデザインのフラットカバーは、室内インテリアに自然に溶け込み、統一感のある空間を演出します。天井取付用(品番:PDK150BWF)は、主にキッチンの天井に取付けられることが多いです。この製品は目立たないデザインで、室内の美観を損なうことなく、効率的な換気を実現します。
品番 | 適用パイプ | 取付箇所 | フィルター |
PDF150BWF | φ150 | 壁面 | メッシュフィルター |
PDK150BWF | 天井 |
「差圧式給気口」の仕組みとは?
密閉された室内でレンジフードを運転して排気を行うと、室内の圧力が急激に下がり、負圧状態が生じます。『差圧式給気口(品番:PDF150BWF)』は、この室内の負圧を感知すると自動でダンパーが開き、新鮮な空気を取り入れる仕組みを持っています。
また、この壁面取付用のPDF150BWFは、室内の壁汚れを軽減する内部構造も搭載しています。
一方、『天井取付用差圧式給気口(品番:PDK150BWF)』は、室内の負圧を感知すると内部のバネが作動し、フラットカバーが開いて新鮮な空気を取り入れる構造になっています。
フィルターのお手入れの重要性
差圧式給気口はリニアに給気量を調整しますが、ユーザーによる定期的なフィルターの清掃が必要です。フィルターがほこりや砂塵で汚れていると、給気量が減少し、十分な性能を発揮できなくなります。フィルターは繰り返し洗って使用可能です。施工時には、ユーザーがカバーを取り外せるように25mm以上のスペースを確保してください。
品番 | 適合品番 | フィルター | 性能 |
PDF-F | PDF150BWF | メッシュフィルター | 防虫・粗塵対策 |
PDK-F | PDK150BWF |
まとめ
高気密住宅では、ドアが重くて開かないことがあります。ドアの歪みやドアクローザーの劣化など他の原因も考えられますが、一つの原因として室内外の気圧差が挙げられます。この場合、室内に空気を取り入れる工夫が必要です。ユーザーが窓の開閉を行えば問題は解消しますが、設備のプロとしては『差圧式給気口』を設置することで、ユーザーに特別な手間をかけずに負圧を解消することをお勧めします。
『差圧式給気口』は、新築時はもちろん、ビルトインコンロやIHクッキングヒーターに入れ替えた際、「同時給排気レンジフード」を採用した現場などにも、ぜひご検討ください。
※本稿は2019年9月11日に公開した記事を、校正し直し2024年5月21日に再公開しました。
佐藤 陽子
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