現場でカンタンに循環液(不凍液)の濃度をチェックできるブラインテスター

冷温水を利用した床暖房や浴室乾燥機などの空調システムの熱媒として欠かすことのできない循環液(不凍液)。システムを安定的に運用するには適切な管理が重要です。本稿では、循環液の凍結温度と製品濃度を現場でカンタンに測定できる「ブラインテスター」をご紹介いたします。

※この記事は2021年3月26日に公開したものですが、新商品を追加し2023年8月3日に再公開しました。

たった2滴、ほんの一瞬で凍結温度が判定できる

サンプル液が1、2滴あれば、誰でもカンタンに循環液の凍結温度と製品濃度を測定できる「ブラインテスター」。施工現場で原液タイプの循環液と水を希釈しながら注入する際や、冷温水システムのメンテナンス時に、凍結温度と製品濃度をほんの一瞬で判定できます。

循環液を知る4つのキーワード

循環液の品質は実に多彩。この多様な違いが生まれる要因として挙げられるのが、水、原料(グリコールやアルコール等)、添加剤、容器の4つ。これらが、凍結防止や防錆防腐などの効果や寿命に影響を与える重要な要素です。

ブラインテスターは循環液の製造元で異なる

循環液は、単純なグリコール水溶液ではなく、いわばブレンダーにより混ぜ合わせて容器に詰めたものなので、工場またはブランド毎にブラインテスターの目盛が変わってきます。今回ご紹介する「ブラインテスター(品番:BR-T3)」は、住宅における床暖房やセントラルヒーティングで使用される循環液(不凍液)の多くを生産するショーワ株式会社で製造している循環液に対応し、「ナイブライン濃度計(品番:NB-T)」は化学工業・食品工場等の産業分野に加え、大型ビル・大型ショッピングモール等の空調分野および道路凍結防止等の公共事業で多くの実績を持つ株式会社MORESCOが製造、日曹商事株式会社で販売している循環液に対応します。

循環液の管理基準

循環液は、品番毎に管理基準値が設けられています。その範囲内で使用できるように「ブラインテスター」を用いて製品濃度の調整を行います。この管理基準値を下回ると循環液自体の劣化が起きやすくなり、配管や熱源機、そして放熱端末の防錆効果も期待できなくなります。逆に管理基準値を上回ると循環液の粘度が高くなりポンプや熱源機負荷が増えてしまいます。適切な値で使用することがシステムを長く使うための秘訣です。

種類 品名 品番 グリコール濃度 管理基準値 基準価格
プロピレン

グリコール系

 

ショウブラインPPスーパー SB-PPS18K 93~95% 製品濃度

20%~55%

¥16,500
エスケーブラインPG SKAF-200L

SKAF-18L

SKAF-10L

93~95% 製品濃度

20%~55%

¥129,000

¥12,400

¥8,500

ショウブラインPFP SB-PFP18K 62~64% 製品濃度

40%~80%

¥14,000
ナイブライン

NFP

NB-NFP18K 55~60% 製品濃度

35%~62%

¥17,500
エチレン

グリコール系

 

ショウブラインPEスーパー SB-PES20K 90~94% 製品濃度

20%~55%

¥13,300
エスケーブラインPE SKE2-20K 92~94% 製品濃度

20%~55%

¥11,400
ショウブラインブルー SB-B20K 77% 製品濃度

25%~80%

¥10,000
ナイブラインZ1 NB-Z1-20K 70~80% 製品濃度

35%

¥18,000

製品濃度とグリコール濃度の違い

循環液には「製品濃度」と「グリコール濃度」という2つの指標があるので複雑に感じます。

製品濃度=製品(グリコール+防錆添加剤+純水)/システム内の循環液

製品濃度とは、その製品自体が1リットル中にどのくらい含まれているかを表す指標です。製品を購入した時点では、グリコール濃度に関わらずどの循環液でも製品濃度は100%です。例えば、システム保有水量が100リットルのシステムに水を60リットル、何らかの循環液を40リットル入れると、製品濃度が40%ということになります。

グリコール濃度=グリコール/システム内の循環液

グリコール濃度とは、1リットル中に含まれるグリコールの量を示す指標です。例えば、1リットルの循環液に0.4リットルのグリコールが含まれていれば、濃度は40%となります。この濃度は主に凍結温度に影響を与え、濃度が高いほど凍結しにくくなる特性があります。循環液のグリコール濃度が高いほど、凍結対策としての性能が向上します。当然のことながらグリコール濃度が高い循環液のほうが価格も高くなりますが、現場で希釈して使うことができるので運搬性が良いと言えます。

ブラインテスターで凍結温度と製品濃度を測定する

循環液の凍結温度とシステム中の製品濃度を判定できる「ブラインテスター」の使用手順をご紹介します。

ブラインテスター

写真はショウブライン用の(品番:BR-T3)。ロゴ以外の外観はナイブライン用も全くおなじ。

品 番 対応ブランド 基準価格
BR-T3 ショウブライン ¥24,900
NB-T ナイブライン ¥35,000
各部の名称

手順1.目盛の調整

写真はショウブライン用の(品番:BR-T3)のもの。ブラインテスター内部に備えられた目盛。左軸がショウブラインPFP、中央がショウブラインブルー及びエチレングリコール系循環液、右軸がショウブラインPG及びプロピレングリコール系循環液を測定できる。

循環液を測る前に、目盛の表示が正しく表示されるかを確認して調整(ゼロ点調整)します。この作業を怠ると正しい値が図れないので注意が必要です。

  1. 蓋板を持ち上げプリズムに水道水を1,2滴垂らし、蓋板を下ろします。この時、水道水が気泡などがなくプリズム全体に広がっていることを確認してください。
  2. 明るい方向を向き、接眼鏡を覗きます。目盛との焦点は接眼鏡を回すことで調整できます。
  3. 青いエリアと透明のエリアの境界線が0を指していれば正しく表示されています。もし異なる場合はブラインテスター底部にある目盛規正ねじを回して調整します。

目盛規正ねじはマイナスドライバーで回すことができます。

手順2.サンプル液の凍結温度と製品濃度を目盛で判定する

サンプル液を使いますが、作業自体は「手順1.目盛の調整」と同じです。目盛には3本の軸があり、測定する循環液によって対応する軸が異なります。基本的に凍結温度はどの製品でも測定することができますが、製品濃度は目盛と対応する一部の循環液のみ測定できます。

製品濃度の判定の可否

【ショウブライン用(品番:BR-T3)】

適合製品 凍結温度 製品濃度
左軸(SB-PFP) ショウブラインPFP 測定可 測定可
ショウブラインS 測定可 測定不可
中央軸(SB-B) ショウブラインブルー 測定可 測定可
ショウブラインPEスーパー 測定可 測定不可
エスケーブラインPE 測定可 測定不可
ロードヒーティング専用ブラインPE 測定可 測定不可
右軸(SB-PP) ショウブラインPPスーパー 測定可 測定可
ショウブラインM-10 測定可 測定不可
エスケーブラインPG 測定可 測定可
ロードヒーティング専用ブラインPG 測定可 測定不可
ノンウォーター循環液(ピンク) 測定可 測定不可
ノンウォーター循環液(グリーン) 測定可 測定不可
ノンウォーター循環液(無色) 測定可 測定不可
ノンウォーター循環液(ブルー) 測定可 測定不可

【ナイブライン用(品番:NB-T)】

適合製品 凍結温度 製品濃度
左軸(Z1) ナイブラインZ1 測定可 測定可
中央軸(RH) ナイブラインRH 測定可 測定可
右軸(NFP) ナイブラインNFP 測定可 測定可
測定作業手順
  1. 蓋板を持ち上げプリズムに測定したい循環液を1、2滴垂らし、蓋板を下ろします。この時、循環液が気泡などがなくプリズム全体に広がっていることを確認してください。
  2. 明るい方向を向き、接眼鏡を覗きます。目盛との焦点は接眼鏡を回すことで調整できます。
  3. 青いエリアと透明のエリアの境界線が対象の循環液の凍結温度と製品濃度です。
  4. 測定が終わったら水を含ませた布やティッシュペーパーできれいに拭き取ります。

循環液が高温の場合は、冷ましてからプリズムに垂らすことをおすすめします。なぜなら、高温の状態で測定するとプリズム面の劣化が早まることがあるからです。

まとめ

ブラインテスターは、わずか1、2滴のサンプル液で、誰でも簡単に循環液(不凍液)の凍結温度と製品濃度を測定できる便利なアイテムです。特に施工現場や定期メンテナンスでは、素早い判断が必要な場面が多く、このブラインテスターは欠かせない存在と言えるでしょう。まだお使いになられていない施工業者の皆様は、ぜひ一度お試しください。

ただし、公共物件などの物件では、濃度だけでなく精密な分析や検査、書類の提出が必要な場合もあります。そのような場合には、「精密分析サービス」をご利用いただくことをお勧めします。このサービスでは、より詳細な分析と正確なデータを提供することが可能です。必要に応じて、ブラインテスターと「精密分析サービス」を組み合わせて、より効果的な管理とメンテナンスを行うことができるでしょう。

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大宮彰大

大宮彰大

営業部所属:ベストパーツ株式会社
2008年入社(36歳)
温水暖房分野を担当し2013年4月完成のベストパーツ株式会社社屋の冷暖房部材選定を行う。
MAIL:omiya.shota@best-parts.jp
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