石膏ボード専用アンカーの強度や耐荷重って？

2024.04.24

佐藤　陽子

石膏ボードは軽量で扱いやすく、加工性に優れているため、建築や内装工事に広く利用されています。しかし石膏の性質上、非常にもろく、ねじが効きません。石膏ボード壁に何か取付けしたい時は、間柱を探して打ち込むか、石膏ボード専用アンカーを使用して取付けるしかありません。数多くある石膏ボード専用アンカーの中でも、本稿では「引張荷重」と「耐荷重」に着目して比較していきます。

1. 石膏ボード専用アンカーの選択

石膏ボード専用アンカーの選択

石膏ボードの壁面にはエアコン、インターホンの親機、手すり、収納棚、ペーパーホルダーの交換、耐震対策など機器や部品を固定する機会が数多くあり、”石膏ボードに何かを取付けする”という需要に応じて『石膏ボード専用アンカー』も様々なメーカーから発売されています。

では、適切なアンカーを選択するにはどのような値を確認したら良いのでしょうか？

石膏ボード専用アンカーの引張荷重と耐荷重

適切なアンカーを選択するための比較基準値として「引張荷重」があります。引張荷重は物を引っ張る方向に働く荷重です。一般的に、kN（キロニュートン）、kgf（キログラムフォース）などの単位で表されます。もう一つは「耐荷重」です。耐荷重はどの程度の重さまで耐えられるかを示す値で、どちらの値も「数値が高い＝信頼性が高く、強度がある」という結果になります。

こちらのブログでもご紹介している通り、石膏ボード専用アンカーは「はさみ固定式（カサ式）アンカー」と「ねじ込み式アンカー」に大別され、ベストパーツオンラインではどちらの種類もラインナップしております。これらは取付物の用途や厚みによって使い分けする必要があります。

はさみ固定式アンカーで比べてみる

はさみ固定式アンカーは全て1パック1箱単位で当日出荷しております。

品番	商品名	最大引張強度　　　　　　　　　（石膏ボード9.5ｍｍ）	耐荷重	ねじ径
MA1-30	エアコンボードアンカー	0.55kN	約56kg	ねじ径：M4
B-412P	ボードファスナー	0.30kN	約31kg	ねじ径：M4
RBA412	らくらくボードアンカー	0.47kN	約48kg	ねじ径：M4
IT-630	ITハンガー	0.20kN*（石膏ボード12.5mm）	約20kg	ねじ径：M6
TM-B	トメラー	0.20kN	約20kg	ビス径：3.5～5ｍｍ

重量がある取付物（約10～20kg近くあるエアコンの室内機）を取付ける際は、傘のように開いてしっかりと壁を挟み込む形状の「はさみ固定式（カサ式）アンカー」の使用がエアコン機器メーカーから推奨されています。その形状だけではなく、以上の表の耐荷重からも性能を十分満足させると考えることができます。トメラーは壁裏で2方向に開脚するのではさみ固定式アンカーに分類されますが、ビスを使用して対象物を取付けるため、タオルハンガーやペーパーホルダーに適しています。

ねじ込み式アンカーで比べてみる

ねじ込み式アンカーは全て1パック1箱単位で当日出荷しております。

品番	商品名	最大引張強度　　　　　　　　　（石膏ボード9.5ｍｍ）	耐荷重	使用ビス径
LST36VP	かべロック　スケルトン	0.21kN	約21kg	ビス径：4ｍｍ
LDX00PB	かべロックDX　ホワイト	0.23kN	約23kg	ビス径：4ｍｍ
B-SB	先鉄三ぶ六くん	0.1kN	約10kg	ビス径：3～6ｍｍ
SD-125	カベッコ	0.20～0.24kN	約20～24kg	ビス径：3～6ｍｍ
BT4-25P30	ボードタップ（金属製）	0.1kN	約10kg	ビス径：4ｍｍ

一方「ねじ込み式アンカー」は下穴が不要で取付けが容易というメリットがありますが、耐荷重・最大引張強度は「はさみ固定式（カサ式）アンカー」と比較すると値が低く、軽～中量物（コートハンガーやペーパーホルダー、装飾棚、インターホン親機）の比較的軽量の取付物に適しています。ただし、取付けするユーザーの住環境により「コートハンガーにたくさん物をぶら下げる」、「高齢者が手すり以外にもペーパーホルダーを掴んでしまう」ような可能性が想定される場合には、耐荷重・最大引張強度の高い石膏ボード専用アンカーを使用することをおすすめします。

石膏ボード専用アンカーの取り外しは可能？

基本的に石膏ボード専用アンカーは取外し、再利用を想定して設計されておりません。

「はさみ固定式（カサ式）アンカー」の取付け後は壁裏で脚が傘状に開いているため、無理に引っ張って外そうとすると直径5cmほどの大きな穴が開いてしまいます。非常に大きな力がかかり、周囲を大きく破損させる恐れもあるため、取外しはおすすめできません。

一方「ねじ込み式アンカー」はねじを逆回転で戻し、アンカーを浮かせてペンチで抜き取ることで取外しできます。下穴（9～10ｍｍ）よりもやや大きめの穴が開いてしまいますが、パテなどで埋め戻し、部分的にクロスを上から貼りつけるなどして穴を目立たなくする程度の補修が可能です。どちらも再利用はできません。

まとめ

数多くある石膏ボード専用アンカーの選定基準の一つとして「耐荷重」、「引張荷重」のご説明をいたしました。取付けしたい対象物の重量やユーザーの住環境により適切なアンカーを選定してください。また、エアコン室内機の取付けを例にあげると、「はさみ固定式（カサ式）アンカー」の中でも電動工具による施工の違いにより、さらに選定することが可能です。本稿が石膏ボード専用アンカー選定の一助となれば幸いです。