温水暖房システムをスムーズに動かす!「圧力損失」の計算方法

温水暖房システムを設計する際、「温水をうまく循環させられるか?」という疑問は非常によく聞かれます。スムーズで効率的な暖房を実現するためには、この温水の循環が鍵となります。今回は、温水暖房システムの設計において極めて重要な要素である「圧力損失」の求め方を、具体的な計算例を交えながらご紹介します。

「圧力損失」とは?

圧力損失とは流体(この場合は温水や不凍液)が機械装置などを通過する際の単位時間、単位流量あたりのエネルギー損失を指します。簡単に言えば、不凍液が配管を通るときの「抵抗」のことです。

この抵抗が大きすぎると、ポンプの力が足りずに温水がしっかり循環しなくなってしまいます。そのため、この圧力損失の正確な値を知ることで、この抵抗に打ち勝つために必要な能力を持った循環ポンプを適切に選定することができます。

圧力損失の算出方法 5つのステップ

1回路当たりの圧力損失は、①放熱端末の圧力損失+②枝管の圧力損失+③主管の圧力損失+④ヘッダー・継手類の圧力損失+⑤高低差で求められます。この計算をすべての回路で行い、一番圧力損失が大きい回路の数値が、システム全体の圧力損失となります。

①まず放熱端末の仕様書を調べる

システムに設置する予定の放熱端末(温水マット、パネルヒータなど)の仕様書を確認し、記載されている圧力損失流量の値を調べます。ここで調べた流量は後述の②枝管や③主管の圧力損失を調べるときにも使用します。

②枝管の圧力損失を配管の仕様書などから調べる

各放熱端末へ温水を送る枝管について、使用する配管の仕様書や性能表に流量と圧力損失の関係を示すグラフがあります。

1回路ごとに、①で調べた放熱端末に必要な流量に基づき、その流量に対する圧力損失を拾い出します。一般的には、単位長さ(例:1m)当たりの圧力損失が示されているため、これに枝管の長さを掛けて求めます。

例)流量と圧力損失のグラフ 三菱ケミカルインフラテック株式会社
冷熱管材総合カタログより

③主管の圧力損失を調べる

すべての放熱端末へ温水を送り出す主管の圧力損失を求めます。主管を通過する流量が分からないと計算できないため「主管の流量 = すべての放熱端末の流量の合計」として、②と同様に流量を対する圧力損失をグラフから求めます。

④ヘッダー・継手類の圧力損失

配管の分岐点となるヘッダーや、配管同士を接続する継手類についても、それぞれの仕様書などに記載されている圧力損失の値を加算します。

⑤高低差

システム内での温水の高低差も圧力に影響を与えます。高低差1m当たり10kPaを加算します。

実際に計算してみましょう!

それでは、具体的な温水暖房システムの設計条件を例に、圧力損失を計算してみましょう。

【条件】

放熱端末 圧力損失 流量
放熱端末1 20kPa 2.3L
放熱端末2 35kPa 0.8L
放熱端末3 19kPa 2.3L

 

枝管 10A 配管長 7A 配管長 高低差
回路1 12m 1m 0m
回路2 5m 1m 0m
回路3 8m 1m +3m

主管 20A 8m 高低差0m

計算

1回路当たりの圧力損失=①放熱端末の圧力損失+②枝管の圧力損失+③主管の圧力損失+④ヘッダー・継手類の圧力損失+⑤高低差ですから順番やっていきましょう。

放熱端末の圧力損失を見てそれぞれ回路ごとに記入していきましょう。

  1. 回路1:20kPa
  2. 回路2:35kPa
  3. 回路3:19kPa

②次に枝管の圧力損失をグラフを参考に記入していきましょう。放熱端末の流量をグラフ横軸に当てはめて、縦軸の圧力損失を見ます。

放熱端末1(回路1)の流量は2.3Lで枝管10Aの配管をみると0.5kPa/mくらいでしょうか。配管長さは12mですので0.5kPa×12m=6kPaとなります。

  1. 回路1=20+6
  2. 回路2=35+0.5
  3. 回路3=19+4

③同じように枝管7Aも足します。

  1. 回路1=20+6+5
  2. 回路2=35+0.5+0.3
  3. 回路3=19+4+5

④次に主管の圧力損失を足します。放熱端末すべての流量を足した5.4Lが主管の流量です。グラフをみると限りなく低いですね。ここでは0.1kPaとします。主管の長さは8mなので0.1×8=0.8です。

  1. 回路1=20+6+5+0.8
  2. 回路2=35+0.5+0.3+0.8
  3. 回路3=19+4+5+0.8

今回はヘッダー、継手については省略します。

⑤最後に高低差を入れます。1m=10kPaです。

  1. 回路1=20+6+5+0.8+0
  2. 回路2=35+0.5+0.3+0.8+0
  3. 回路3=19+4+5+0.8+30

これを計算すると、、、

  1. 回路1=20+6+5+0.8+0=31.8kPa
  2. 回路2=35+0.5+0.3+0.8+0=36.6kPa
  3. 回路3=19+4+5+0.8+30=58.8kPa

となります。

この中で一番大きい58.8kPaがこの温水暖房システム全体の圧力損失となります。循環ポンプを選定する際は、この値以上の能力を持つものを選ぶ必要があります。

まとめ

温水暖房システムにおける圧力損失の計算は、温水の滞りない循環を保証し、ひいては暖房の効きを決定づける非常に重要な工程です。

圧力損失の計算で得られた値は、循環ポンプの選定だけでなく、放熱端末の最適な配置やヘッダーの回路数などを決定するための大きな判断材料となります。適切なパーツ選定の一助となり、快適で効率的な温水暖房システムを実現していただければ幸いです。

ご意見、ご質問などありましたら、こちらのフォームよりお気軽にお問い合わせください。

※このブログは2019年4月4日に初回公開されましたが、修正を重ね、2025年10月24日に再度公開しております。

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大宮彰大

営業部所属:ベストパーツ株式会社 2008年入社(36歳) 温水暖房分野を担当し2013年4月完成のベストパーツ株式会社社屋の冷暖房部材選定を行う。 MAIL:omiya.shota@best-parts.jp
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