溶存酸素も積極的に脱気するエアセパレータ:温水暖房システムを安定

温水暖房の密閉システムにおいて、熱源機、配管、パネルラジエータなどの機器設置はもちろん重要ですが、それと同じくらいエア抜き作業がとても重要です。セオリー通り、「ブライン注入ポンプ(品番:CL-1521)」を使用して、循環液(不凍液)を循環させながら回路ごとに丁寧にエア抜きしていても、簡単には抜け切らず、時間がかかったという経験をされた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。本稿では通常の運転をしながら積極的にエア抜きをする「エアセパレータ」を紹介します。

エアセパレータを設置するとエア抜きが楽になる

密閉システム内のエアを抜く方法には、大きく分けて二つのアプローチがあります。

1、ブライン注入ポンプによる強制循環脱気
まずは冒頭でも触れた「ブライン注入ポンプ(品番:CL-1521)」で循環しながら抜く、最もポピュラーで確実な方法です。施工時や定期的なメンテナンス時にはよい方法ですが、通常運転の時に行うには大掛かりな方法です。

2、エアベントの設置による自然脱気
もう一つは密閉システム内の最も高い場所や、ヘッダーなど循環水が集まる箇所に「エアベント」を設置する方法です。流れてきたエアを抜く仕組みなので、通常運転中にもエアベントにエアが流れ込んでくれば脱気することができますが、エアベント本体にうまく入り込まないと脱気することはできません。

この方法に対し、「エアセパレータ」は特別な工具を必要とせず、通常の運転をしながら積極的に脱気するアイテムです。

エアセパレータは溶存酸素も積極的に脱気する

「エアセパレータ」は配管上に設置するだけで循環液(ブライン)内の溶存酸素までも強制的に脱気することができます。

特殊なメッシュで溶存酸素を吸着する

「エアセパレータ」内部には特殊なメッシュが備えられています。このメッシュが循環液(不凍液)に溶存している細かな気泡を吸着します。吸着された気泡は、徐々に集まって次第に大きくなり、最終的にエアセパレータの上部に溜まり、自動でシステム外に排気される仕組みです。

エアセパレーター:特殊メッシュで吸着した気泡

特殊メッシュで吸着した気泡 上に行くほど気泡が大きくなり、システム外に排出されます。

循環水は必ずエアセパレータを通過する流路設計

内部は一般的なエアベントにメッシュが組み合わせられている。

「エアセパレータ」が一般的なエアベントと異なるのは、流れ込んできたブラインに溶存している酸素まで脱気する点です。これを実現するために、循環水が必ずメッシュを通過する構造になっています。さらに配管径より「エアセパレータ」のボディを太く設計することで、内部で流速が落ち排気部へ気泡が上昇しやすくなるよう設計されています。

優れた脱気性能がシステム安定化に貢献

脱気能力を表したグラフ

脱気能力を表したグラフ。縦軸が空気量%、横軸が時間(秒)。青色の線は投入された空気で赤色の線は脱気した空気。

実験では、密閉システム内に意図的に空気を投入し、脱気にかかる時間を測定しています。

  • 300秒で約50%
  • 400秒で80%程度

システム内に放たれた空気をこれだけのスピードで脱気しており、800秒を過ぎると90%以上の空気をシステム外に放出していることがわかります。

熱源機の往き側に取り付けるとより高い効果を発揮する

一般的なエアベントはシステムの一番高いところに設置することが良いとされています。これはシステム内のエアが浮上していった場合に抜けることを期待してのことです。

一方で「エアセパレータ」はどこに設置しても効果を発揮しますが、中でも最も効果的な設置位置は流体温度が高く溶存酸素が溶出しやすい「往き側配管側」です。

エアセパレータ設置位置例

青色が戻り側配管、赤色が往き側配管を表しています。

縦配管、横配管どちらにも対応できるラインナップ

様々な現場に対応できるよう、CALEFFI社の「エアセパレータ」には立配管用と横配管用の2種類のラインナップされています。

エアセパレータ 縦配管用(品番:551905)
エアセパレータ:551905

「エアセパレータ(品番:551905)」は1台から当日出荷いたします。

立配管用は流水方向が上から下へと定められているのでシステム設計の際はご注意ください。

品番 設置位置 ねじ
551905 立配管 G3/4メス
エアセパレータ 横配管用(品番:551003)
エアセパレータ:551003

エアセパレータ(品番:551003)は1台から当日出荷いたします!

品番 設置位置 ねじ
551003 横配管 G3/4メス

おすすめのシール剤を使う

「エアセパレータ」の接続口はG3/4メスです。このG3/4は一般的な袋ナットとパッキンで止水するねじではないため、接続にはシール材が必要です。シールテープでも構いませんが、循環液への影響が少なく、銅管、樹脂管等多種の配管材に使用できる2種のシール剤をオススメしています。

無溶剤型シール材 (品番:F3-W)
無溶剤型シール材(品番:F-3W)

幅広い配管材料に使用できる「無溶剤型シール材(品番:F-3W)」は当日出荷!

無溶剤型で、循環液に影響を及ぼさないシール材で、銅管・樹脂管・鉄管・SUS管・合金配管に使用可能です。

品番 容量
F-3W 100g
嫌気性シール材(品番:LOC575-5)
嫌気性シール剤(品番:LOC575-5)

嫌気性シール剤(品番:LOC575-5)

こちらも無溶剤型ですが、ネジ部に塗布後、締め付けることにより、空気が遮断されると硬化しシールする嫌気性タイプです。しっかり硬化し循環液にも影響を及ぼしません。

品番 容量
LOC575-5 50ml

変換継手で簡単にシステムへ組み込む

既存のシステム追加する場合や、メンテナンスを考えて「エアセパレータ」の前後にバルブを設けたいときには「変換ニップル(品番:BRN-20GR)」「平行ニップル(品番:BRN-20GG)」が便利です。どちらもパッキン仕様ではないG3/4ねじにも対応できるねじ長さがあります。

変換ニップル
フレキニップル

フレキニップルよりGねじの山数が多い変換ニップルは当日出荷!

品番 ねじ
BRN-20GR G3/4×R3/4
平行ニップル
平行ニップル

ねじ山が多く、パッキン仕様でないGねじにも対応した平行ニップル

品番 ねじ
BRN-20GG G3/4×G3/4

まとめ

温水暖房の密閉システムにおいて、エア抜き作業はシステムの寿命と安定稼働に直結する非常に重要な工程です。

施工時には「ブライン注入ポンプ(品番:CL-1521)」で丁寧なエア抜きを行うのはセオリーですが、それでも抜けきらない残留エアや溶存酸素は、運転中の配管腐食や騒音の原因となり得ます。

通常の運転をしながら、溶存酸素までも積極的に脱気できる、とても便利な「エアセパレータ」を、ぜひ一度お試し下さい!

※この記事は2019年3月1日に初めて公開し、追加・修正を重ねて2025年11月04日に再公開しました。

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大宮彰大

営業部所属:ベストパーツ株式会社 2008年入社(36歳) 温水暖房分野を担当し2013年4月完成のベストパーツ株式会社社屋の冷暖房部材選定を行う。 MAIL:omiya.shota@best-parts.jp
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