劣化状況と交換時期が分かる。どこでもできる循環液(不凍液)の分析方法

冷温水空調システムにおいて配管内を常に循環し熱を搬送し続けている循環液は、システムの安定した運転を行う上で非常に重要な要素です。循環液には防錆防食添加剤が含まれており長期間安定して使用することができますが、環境や時間の経過とともに徐々に劣化していきます。本稿では循環液(不凍液)の状況を知り、交換や追加の判断を行うための方法をご紹介します。

※本稿は2020年2月14日に公開しましたが、商品の仕様変更に伴い2022年10月17日に再度公開しました。

循環液の交換時期は、調査による科学的根拠に基づき決定してください。

お客様から「循環液(不凍液)の寿命は何年?」とご質問をいただくことがあります。多くの熱源機メーカーでは循環液の交換目安を2年~3年で設定しています。熱源機メーカーの循環液を使用している場合は、それに従うのが無難です。ただし、厳密には使用温度、運転時間、配管や放熱器の材料、そして外部環境によって劣化具合に差が出るため、現在の循環液の状況を調査し科学的根拠に基づき継続使用、交換、追加投入の判断を行うことが望ましいです。

そもそも循環液を交換やメンテナンスしないとどうなるか?

循環液は長い間使用していると品質が低下します。循環液の品質とは、凍結温度、防腐性能、防錆性能の低下です。品質低下の原因となる最も大きな要素は水道水の補充です。

暖房時には循環温度の上昇によりシステム内圧力が高まり、逃し弁から循環液を排出して過剰な圧力の高まりからシステム全体を守ることがあります。運転を止めると温度が下がり圧力も低下し、排出した分の循環水が不足することになります。これを補うために水道水を投入すると、循環液はどんどん薄くなり、劣化しやすい環境になります。

グリコール濃度が低下すると氷点が上昇し凍結によるトラブルが起きる

循環液の減少分を水道水で充填すると、グリコール濃度が低下し氷点が上昇します。暖房回路を年中運転していれば凍結しませんが、実生活では旅行などで数日間家を空ける場合や、万が一燃料が切れた場合には、運転を停止してしまい凍結するリスクが高まります。循環液は配管内を満たしているので、凍結温度に達すると水分が膨張して最悪の場合、配管が破裂してしまいます。最近は架橋ポリエチレン管などの樹脂配管が増えたため、破裂しにくくなったとおっしゃる施工業者様もいらっしゃいますが、破裂しなくても内部から大きい力が加わった樹脂管は耐圧性能が低下しています。

凍結リスクが一目瞭然「ブラインテスター(品番:BR-T3)」

循環液の凍結リスクの点検は「ブラインテスター(品番:BR-T3)」を使えば一目瞭然です。ブラインテスターで地域の最低気温より氷点が上昇していた場合は、目視にて循環液に濁りがなければ原液タイプの循環液「エスケーブラインPG(品番:SKAF-18L)」などの高濃度の循環液を投入して目標とする凍結温度まで下げてください。逆に濃度が高すぎる場合は、「ノンウォーター補充液(品番:SKNW-S2)」で薄めてください。仮に循環液に濁りがある場合は全量交換をおすすめします。

品番 基準価格
BR-T3 ¥24,900

酸性の度合いが高くなると金属の腐食リスクが上昇し、藻やカビが発生する

酸化還元性(電位)とpH(ピーエイチ:水素イオン指数)が、循環回路の金属腐食に影響する基本的な環境因子です。循環液はpHを6.5~10.0とアルカリの度合いを強くすることで酸化物を安定させ、熱交換機などの金属製品の腐食やゴム・樹脂の劣化を防いでいます。しかし、純水ではない水の投入や結露水により、水素ガスを発生しながら金属イオンとなって循環液中に溶け出し、中性~酸性へと変化していきます。中性~酸性になるとシステム内の金属部分への浸食や樹脂やゴムの劣化、そして長期間運転を停止している状態では藻やカビの発生など冷暖房システム全体に悪影響を及ぼします。

pH試験紙(品番:SK-PHS)

実は、循環液のpH値を調べるのはとてもカンタンで「pH試験紙(品番:SK-PHS)」を循環液につけるだけ。色の変化で現在のpH値が一目でわかります。pH6.5~10.0以下の場合は循環液の全量交換をおすすめします。

pH試験紙は当日出荷!

品番 長さ 基準価格
SK-PHS 7mm 5m ¥1,550

防錆剤の減少による配管腐食

暖房回路では写真のような漏水はありえません・・・イメージだと広い心で許容してください。

循環液には金属を腐食させない防食添加剤が含まれています。しかし、経年劣化により含有していた防食添加剤を消化してしまった循環液は、徐々に配管を腐食させ漏水リスクを高めます。

ブラインチェッカー(品番:SK-CK100)

防錆剤の減少による漏水リスクは、「ブラインチェッカー(品番:SK-CK100)」を使い確認します。ブラインチェッカーで反応が出た場合は、防食添加剤の低下が考えられます。凍結温度、pH値が許容範囲であり、循環液に濁りがなければ「ノンウォーター補充液(品番:SKNW-S2)」を注入して対応してください。この商品は、グリコール濃度が2~3wt%しかなく純水に防錆防腐剤を添加した液体なので、粘度はそのままに防錆防腐能力だけを回復します。

ブラインチェッカーは循環液交換時期を目視できます。使い方はカンタンで、サンプリングした循環液をビーカーに採り、ブラインチェッカーを約1ml入れて混ぜるだけ。5秒放置して茶色に変化した場合は交換時期を迎えているサインです。

品番 容量 基準価格
SK-CK100 100㎖ ¥6,250

まとめ

循環液(不凍液)は、凍結防止、腐食防止、錆などの腐食の抑制を担っています。循環液の品質は凍結温度はブラインテスター、防腐性能はpH試験紙、防錆性能はブラインチェッカーを使えば簡単に調べることができます。暖房シーズンの前にユーザー宅を訪れブラインテスター、pH試験紙、ブラインチェッカーを使って点検し、循環液の分析結果をもとにユーザーと話し合い、科学的根拠で導き出した交換時期を設定することでユーザー様から信頼され、末長くお付き合いいただけるきっかけになること請け合いです。もしまだお使いになっていない方はぜひお試しください。

なお、公共物件等でエビデンスの提示を求められる場合、精密分析を承ります。お問合せの上、ペットボトルに500ml程度の循環液を入れてベストパーツまでお送りください。

ベストパーツオンラインショップ

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大宮彰大

大宮彰大

営業部所属:ベストパーツ株式会社
2008年入社(36歳)
温水暖房分野を担当し2013年4月完成のベストパーツ株式会社社屋の冷暖房部材選定を行う。
MAIL:omiya.shota@best-parts.jp
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