住宅の2階や3階にバスルームやキッチンを配置すると、シャワーやその他の給湯設備の水圧が弱く感じることがあります。この問題は、地域の水圧だけでなく、給湯器自体の性能にも起因します。特に、貯湯式給湯器を使用している場合、高圧仕様の製品でないと満足な水圧が得られないことが多いです。このような水圧の問題を解決するために有効な設備が「給湯加圧ポンプ」です。

給湯加圧ポンプの選定前に知っておきたいポイント

「給湯加圧ポンプ」は、給湯器が作り出すお湯を低い場所から高い場所へ、あるいは出湯箇所まで距離がある場合に適切に送り出す設備です。配管内の流体の流れを検知して自動で運転、停止を行います。しかし、効果的に機能させるためには、現場状況に応じた適切なポンプの選定が欠かせません。本稿では、最適な給湯加圧ポンプを選定する前に知っておきたいポイントをご紹介いたします。

給湯設備が要求する流量、揚程を考慮する

単位時間当たりどの位の水量（揚水量Q）を、水柱換算でどの位の高さ（全揚程H）のエネルギーを持って送り出すことができるかというのが主なポンプの選定要素です。加えて周辺部品までユニット化されている「給湯加圧ポンプ」に限っては、作動スイッチについても知っておく必要があります。

「給湯加圧ポンプ」に限らずポンプを選定する際には、給湯設備が要求する「必要流量」と「揚程」を満たす必要があります。一般的に蛇口からの吐水であれば16L/min、シャワーであれば13L/min、圧力は0.2±0.1Mpa程度が適当と言われています。出湯箇所で適切な値を得るためには、現場状況に応じて最適な能力を有したポンプを選定することが重要です。

作動スイッチによる役割の違い

「給湯加圧ポンプ」には「圧力スイッチ」と「流量スイッチ」が組み込まれています。「圧力スイッチ」は配管内の圧力が低下したことを検知してポンプを運転させます。「流量スイッチ」は蛇口を開けて水が流れるのを検知するとポンプを運転させるスイッチです。

給湯加圧ポンプには圧力・流量スイッチ併用式、流量スイッチ式があります。圧力・流量スイッチ併用式のポンプは、運転と停止をより正確に制御して必要な時にのみ運転させるため無駄なエネルギー消費を抑えることができます。流量スイッチ式は本体に流量スイッチのみが内蔵されており、蛇口を閉止するまで運転を続けるので、安定した出湯圧力で使用することができます。

以上を踏まえた上で、以下の記事「給湯厚不足を解決する『給湯過圧ポンプ』選定チャート」でご紹介しているフローチャートに沿ってポンプ選定を進めていけば、どの「給湯加圧ポンプ」が意図どおりに機能を発揮できるのかが明確になります。

給湯圧不足を解決する『給湯加圧ポンプ』選定チャート

まとめ

最近のエコキュートでは高圧タイプが主流となっていますが、それでも水道直圧式の給湯器からの切り替えユーザーは、以前の設備に比べて給湯圧が弱いと感じることがあり、これが不満に繋がる場合があります。給湯圧が不足していると感じた場合の解決策として「給湯加圧ポンプ」があります。このポンプを選定する際は、現場の状況に応じて必要な流量や揚程を事前に確認することが重要です。給湯加圧ポンプは水圧を安定させ、快適で効率的な水の供給をユーザーの生活にサポートします。

※2022年6月8日に公開された記事を校正し、2024年5月13日に再度公開しました。