圧着端子の種類と使い分け:作業性とメンテナンス性の向上
圧着端子の主要な2つの分類
圧着端子は多岐にわたる種類が存在しますが、大まかには電線と電子機器を接続するものと、電線同士を接続するものの2つにカテゴライズすることができます。これらのカテゴリにはそれぞれ形状や用途の違いが見受けられるため、次にそれらの特性と用途を明確にしていきます。
電線と電子機器を接続するための圧着端子
Y形圧着端子の作業性とメンテナンス性の特長
Y形圧着端子は、その特性上、ねじの取り外しを必要とせずに接続が可能であり、この点で丸型と比較すると作業時間の短縮が期待できます。同じく、ねじを取り外さない脱着の容易さは、施工後のメンテナンスにも大きな利点となります。しかしながら、ねじのサイズが不適切であったり、締め付けが不十分だと端子が意図しない時に外れる恐れが高まるため、注意が求められます。さらに、Y形圧着端子はJIS規格を取得していないため、JIS規格の部品指定があるプロジェクトや環境ではその利用が制限される点も頭に入れておく必要があります。
品番 | 商品名 | 電線抱合範囲 | |
より線 | AWG | ||
TMEX-1.25Y-3 | Y形絶縁圧着端子 |
0.3~1.65 |
22~16 |
TMEX1.25Y3.5 | |||
TMEX1.25Y-3L | |||
TMEX1.25Y-3N | |||
TMEX-1.25Y-4S | |||
1.25Y-3 | Y形裸圧着端子 |
0.25~1.65 |
22~16 |
1.25Y-3.5 | |||
1.25Y-4S |
ツメ機能付きで確実な固定を実現する「ツメあり」Y形端子
一般的なY形端子との大きな違いは、端子の部分に「ツメ」がついており、これが端子台にしっかりと引っ掛かる構造になっています。このツメの存在により、端子が意図せずに脱落するリスクが大幅に低減します。特に、施工時やメンテナンス時の作業性を損なわず、同時に安全性を高めたい場合、この”ツメあり”タイプが最適です。取り扱いを考慮する際、確実な固定を求めるシチュエーションではこのタイプの選定を強くおすすめします。
品番 | 商品名 | 電線抱合範囲 | |
より線 | AWG | ||
TMEX-1.25Y-3W | Y形絶縁圧着端子 | 0.3~1.65 | 22~16 |
TMEX-1.25Y-4W |
JIS規格対応で安心の固定性を持つ丸形(R形)圧着端子
丸形(R形)圧着端子の特長は、ねじが緩んでも端子が完全に外れない構造になっていることです。そのため、複数の端子を1箇所に接続する作業も容易に実現できます。しかし、メンテナンスを行う際には、圧着端子を固定しているねじを完全に取り外す作業が必要となります。この点では、Y形の圧着端子に比べて少し手間が増えるかもしれません。その一方で、「丸形圧着端子」はJIS規格に適合しているため、その品質は確実に保証されています。JIS規格の要件を満たす必要がある場合、この「丸形」の使用が推奨されます。
品番 | 商品名 | 電線抱合範囲 | |
より線 | AWG | ||
TMEX-1.25-3 | 丸形絶縁圧着端子 | 0.3~1.65 | 22~16 |
TMEX-2-4S | 1.04~2.63 | 16~14 | |
R1.25-3 | 丸形裸圧着端子 |
0.25~1.65 | 22~16 |
R2-4 | 1.04~2.63 | 16~14 | |
R2-4S | |||
R5.5-4 | 2.63〜6.64 |
12〜10 |
|
R5.5-5 | |||
R8-5 | 10.52 | 8 | |
R14-5 | 10.52〜16.78 | 6 |
押し込み式端子台向けの棒型圧着端子
棒形圧着端子は主に押し込み式の端子台に適用されます。しかしながら、一般的にはVVFケーブル(単線)を使用するコンセントやスイッチの配線で、他社の施工がより線で行われている場合にもこの端子を活用することができます。具体的には、「棒形圧着端子」を使用して、より線を単線に変換する作業が行われます。このような多様な用途で活用できるため、常備しておくと、非標準の配線状況にも迅速に対応可能です。工具箱に1つ備えておけば、さまざまなシチュエーションでの安心感を得られます。
品番 | 商品名 | 電線抱合範囲 | |
より線 | AWG | ||
TMEXTC1.25-16 | 棒形絶縁圧着端子 | 0.3~1.65 | 22~16 |
TMEXTC2-16 | 1.04~2.63 | 16~14 | |
TC1.25-16 | 棒形裸圧着端子 |
0.25~1.65 | 22~16 |
TC2-16 | 1.04~2.63 | 16~14 |
電線同士を接続するための圧着スリーブ
単線用の圧着スリーブとその特徴
圧着スリーブは、電線の接続を確実に行うための部品として広く利用されています。特に単線同士の接続にはこの単線用の圧着スリーブが適しており、確実な電気的接触を実現します。正しく圧着することで、電線同士の接触面積が増し、抵抗値が低下し、信号や電流の伝達がスムーズに行われます。一般的な配線作業や修理作業で頻繁に使用されるため、電気工事士や技術者の工具箱には欠かせないアイテムとなっています。
品番 | 商品名 |
E-S | 裸圧着スリーブ(重ね合せ) |
E-M | |
E-L |
より線の接続に特化した絶縁被覆付閉端子
絶縁被覆付閉端子は、電線の終端部を安全に保護しながら、より線同士の圧着接続を行うための部品として利用されます。特に、より線が細かく分かれているため通常の接続方法での接触不良や断線のリスクがある場合や、絶縁を確実にしたい場合に有効です。絶縁被覆は電気的なショートや触電を防ぐための重要な機能を果たします。具体的には、給湯器のリモコン工事でよく用いられるVCTFケーブルなど、機器からの電線とリモコンからの電線を安全かつ確実に接続するために使用されます。
品番 | 商品名 |
CE-1 | 絶縁被覆付閉端子 |
CE-2 | |
CE-5 |
圧着端子のサイズ選定のポイント
圧着端子の選定は、使用する電線の断面積と、取り付けるねじの径によって決まります。各メーカーは、これらの情報を端子の品番に反映して、選定を容易にしています。
例として、代表的な端子メーカーであるニチフの「丸形裸圧着端子(品番:R1.25-3)」を挙げます。この品番「R1.25-3」からは、電線の断面積が1.25mm2、そしてねじの径が直径3㎜であることがわかります。
具体的には、品番のアルファベットに続く数字が電線の断面積を、ハイフン以降の数字がねじの径を示しています。しかし、全ての端子がこの命名規則に従っているわけではないため、選定の際は、メーカーのカタログやデータシートも参照することが推奨されます。
品 番 | 電線抱合範囲 | ||
AWG | 単線(mm) | より線(mm2) | |
R1.25-3 | 22~16 | 0.57~1.44 | 0.25~1.65 |
表における「AWG」は、アメリカで採用されている導体太さの単位を指します。これは、日本における断面積の単位「SQ(スケア)」に相当します。ただし、AWGの場合、数字が大きいほど導体は細くなります。一方、SQでは数字が大きいほど導体は太くなります。この点に注意が必要です。
海外相当サイズ | 外径 | 断面積 |
AWG | mm | mm2 |
22 | 0.642 | 0.3243 |
20 | 0.8128 | 0.5189 |
18 | 1.024 | 0.8233 |
16 | 1.290 | 1.308 |
14 | 1.628 | 2.082 |
12 | 2.052 | 3.309 |
10 | 2.588 | 5.260 |
6 | 4.115 | 13.30 |
まとめ
種類の多い圧着端子ですが、それぞれに特徴があり電線や端子台に合わせた選定が必要です。電線と電子機器を接続する場合、ねじ式は、作業性に優れた「Y形圧着端子」もしくは、JIS規格品で脱落の心配がない「丸形圧着端子」、押し込み式は「棒形圧着端子」という具合に選定して下さい。電線同士を圧着する場合は、単線であれば「圧着スリーブ」、より線であれば「絶縁被覆付閉端子」を選定して下さい。選定の際は、品番のアルファベットの次に来る数字が断面積、ハイフンの後の数字がねじ径という具合に考えるとサイズの選定の役に立ちます。
※この記事は初めて2019年3月29日に公開されました。その後、2021年5月6日に内容を修正して再公開し、さらに10月30日に商品の追加と内容の修正を行い、再度公開されました。
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