銅管・鋼管を使用した温水暖房システム:循環液のpH値定期確認で腐食を防ぐ

温水暖房の基本的な仕組みは昔から大きく変わっていませんが、その機器や配管の耐久性、そして性能は日々進化を遂げています。特に大きな変化は、配管材料の樹脂化、すなわち架橋ポリエチレン管の普及です。しかし、現在でも施工会社によっては銅管や鋼管が配管に使用されるケースがあります。もしあなたの温水暖房システムでこれらの金属管が使われている場合、循環回路の腐食反応を把握するために、循環液のpH値を定期的に確認し、適切な防食システムを維持する必要があります。

循環液のpHが7.0以上であることを確認しよう

現在、温水暖房システムの循環回路の大部分が樹脂化されている現場では、メンテナンスフリーになったと言っても過言ではありません。しかし、それは配管材料が樹脂化されている場合に限られます。

もし、循環回路に銅管や亜鉛メッキ鋼管が使用されている場合、その耐食性(腐食しにくさ)はpHに大きく依存します。pHが低くなると、金属表面を保護する被膜が形成されにくくなり、腐食が進行しやすくなります。

このため、特に暖房シーズンに入る前には、必ず専用の用具を使って循環液のpHが少なくとも7.0以上であることを確認しなければなりません。

サンプリングで循環液の劣化状態を目視チェック

循環液は、劣化が進むにつれて目で見て明らかな不純物が発生することがあります。回路の注排水口から清潔な容器に循環液をサンプリングして、まずは目視で確認を行ってください。

サンプリングした液を目視して、異物が見受けられる、あるいは黒っぽい色に変色しているようであれば、銅や亜鉛などの金属に腐食反応が現れており、循環液に含まれる防食剤が消費されているという仮説が立てられます。

また、循環液内に混入している異物をそのまま放置してしまうと、熱交換器や循環ポンプといったシステムの重要部品の故障の原因にもなりかねません。定期的なチェックで早期に劣化を発見することが、システムの長寿命化に繋がります。

現場でpHを確認する時に役立つ循環液管理用品

循環回路の腐食要因はpH以外にも、硬度、溶存酸素濃度、塩化物及び硫酸イオン、溶性ケイ酸、さらには循環液の流速や温度など多岐にわたります。

通常、不具合が見られない現場であれば、採取したごく少量の循環液でpHとグリコール濃度(凍結防止剤の濃度)の確認を行うだけで十分です。

万が一、暖房の効きが悪い、異音がするなど、システムに不具合がある場合は、より詳しい精密分析をご依頼ください。精密分析の結果から、防食システムを維持するために必要な具体的な処方箋が示されます。

▶精密分析いついてはこちらのブログもご参照ください!【超便利!在宅ワーク時代のブライン精密分析

「PH試験紙(品番:SK-PHS)」を用いて弱アルカリ性であることを確認する

PH試験紙(ペーハー試験紙)

「PH試験紙(品番:SK-PHS)」は1巻から当日出荷です。

新品の循環液は、通常弱アルカリ性に保たれています。前述の通り、特に銅管や亜鉛メッキ鋼管では腐食がpHの影響を強く受けるため、pH7.0~8.0の範囲内に収まっていることが理想とされます。ちなみに、同じ金属配管でもステンレス配管の耐食性は、pHの影響をわずかしか受けません。

現場で手軽にpHを測定するには、「PH試験紙」が非常に便利です。

使い方はとてもカンタンで、採取した循環液に「PH試験紙(品番:SK-PHS)」を濡れる程度つけます。変色した試験紙の色と標準色を比較してpH値を読み取ることができます。

交換基準のpH値は、各循環液により若干異なりますが、目安としては、

  • プロピレングリコール系pH7.0を下回った時点
  • エチレングリコール系pH8.0を下回った時点

で交換します。

品番 長さ
SK-PHS 7mm 5m

「ブラインテスター」で凍結温度を調べる

ブラインテスター(品番:BR-T3)

「ブラインテスター(品番:BR-T3)」は1個から当日出荷です。

ブラインテスター表示

「ブラインテスター(品番:BR-T3)」は、たった1滴のサンプリングで循環液の濃度や凍結温度を調べることができる分析器です。本来は原液を希釈する際に使用しますが、既設循環回路内の循環液であっても正確に調査ができるのでとても便利です。ただし循環液のブランドによって異なりますので、物件数の多い施工業者様であれば、循環液は統一することをオススメします。

ベストパーツOnlineで当日出荷している「ブラインテスター(品番:BR-T3)」は、目盛が3本あります。最も使われる目盛は向かって右側の「SB-PP」の軸で、「エスケーブラインPG」「ショウブラインPPスーパー」を測定することができます。真ん中の「SB-Blue」の軸は、「エスケーブラインPE」「ショウブラインブルー「ショウブラインPEスーパー」を測定できます。左側「SB-PFP」の軸は、「ショウブラインPFP」を使用する場合にお使いください。

回路内にカビなどが発生しているような特別な状況でなければ、凍結温度の値を見るだけで十分です。もし、注入当初の設計凍結温度を下回っている場合は、凍結リスクが高まっているため、循環液の追加または交換が必要となります。特に寒冷地では、凍結は配管破裂などの重大な事故に繋がるため、このチェックは欠かせません。

品番 寸法・重量
BR-T3 3.2×3.4×16.8cm・90g

まとめ

温水暖房システムに銅管や亜鉛メッキ鋼管を使用している場合、循環液のpHが少なくとも7.0以上でなければ回路の腐食が進行するリスクが高まります。腐食反応は、流速や温度で加速するため、暖房シーズンの前に循環液のpH分析を実施してください。現場で分析する用具としてオススメしているのは、「PPビーカー」「PH試験紙(品番:SK-PHS)」、そして「ブラインテスター(品番:BR-T3)」です。

なお、既に不具合が発生している現場では、精密分析をご依頼ください。システムを安全に維持するために必要な具体的な防食システムの処方箋を入手することができます。

※2019年3月25日に公開した記事ですが、修正して2025年10月29日に再度公開しました。
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